キャンプでスマホやライトを充電したり、電気毛布を使ったりするのに便利なポータブル電源。最近は「停電したときの備え」として選ぶ人も増えています。ただ、カタログには Wh・W・サイクル数などの数字が並び、どれを見ればよいのか分かりにくいのも事実です。
この記事では、キャンプと防災の両方で使うことを前提に、ポータブル電源を選ぶときに見るべきポイントを整理します。そのうえで、売れ筋の1kWh(1,000Wh)クラスから3機種を、メーカーや専門メディアが公開しているスペックで比較します。
※価格は時期やセールで大きく変わります。記事中の価格はメーカーの通常価格・定価として報じられたもので、実際の販売価格は購入前に確認してください。
ポータブル電源が防災で役立つ理由
停電すると、照明・スマートフォンの充電・情報収集のためのラジオやテレビなど、普段は当たり前に使っている電気が止まります。ポータブル電源があれば、こうした小さな電力をまかなうことができます。
もうひとつの大きな違いは、ポータブル電源は燃料を燃やさないため、排ガスを出さないことです。ガソリンなどを使う携帯発電機について、製品評価技術基盤機構(NITE)は経済産業省・消費者庁と同時に、排ガスに一酸化炭素が含まれ、屋内で使うと中毒で死亡するおそれがあるとして、屋内では絶対に使用しないよう注意を呼びかけています。自動車内やテント内も屋内と同等以上に危険だとされています。
一方で、ポータブル電源はリチウムイオン電池を内蔵した製品です。NITE はリチウムイオン電池搭載製品の事故が増えているとして、ポータブル電源の事故も増加傾向にあると報告しています。そして、高温となる場所で使用・保管しないこと、強い衝撃や圧力を加えないこと、異常を感じたら使用を中止することを呼びかけています。「燃えないから安全」ではなく、電池製品としての扱い方を守ることが大切です。
選び方の4つのポイント
1. 容量(Wh):どれだけの時間使えるか
容量は「Wh(ワットアワー)」で表され、数字が大きいほど長く電気を使えます。目安は「容量 ÷ 使う機器の消費電力」です。ただし、実際には電圧の変換などでロスが出るため、使える電力量は表示容量より少なくなります。
たとえば仮に容量の8割が使えるとすると、1,000Whのポータブル電源なら、消費電力50Wの機器を約16時間使える計算です。スマートフォンの充電、LEDライト、小型の扇風機や電気毛布など、消費電力の小さい機器を中心に使うなら、1kWhクラスでもかなり余裕があります。
2. 定格出力(W):どの家電が動くか
定格出力は「同時に、継続して出せる電力」の上限です。使いたい家電の消費電力がこれを超えると動きません。電子レンジやドライヤー、電気ケトルなど消費電力の大きい家電を使いたいなら、定格出力1,500W前後のモデルが候補になります。
起動時に一時的に大きな電力が必要な家電もあるため、「瞬間最大出力」もあわせて確認しておくと安心です。
3. 電池の種類とサイクル数:何年使えるか
最近の主流は「リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)」です。今回取り上げる3機種はいずれもリン酸鉄リチウムイオン電池を採用しており、約4,000回の充放電サイクルをうたっています。防災用は「いざというときまで長く持っておく」ものなので、電池の寿命は重要なポイントです。
4. 充電時間と充電方法:停電中にどう充電するか
停電が長引くと、コンセントから充電できません。そのため、ソーラーパネルや車のシガーソケットから充電できるかどうかも確認しておきましょう。また、コンセントからの充電が速いモデルなら、台風の接近など「停電しそうだ」と分かってから満充電にすることもできます。
1kWhクラス3機種のスペック比較
| 項目 | Jackery 1000 New | Anker Solix C1000 Gen 2 | EcoFlow DELTA 3 Plus |
|---|---|---|---|
| 容量 | 1,070Wh | 1,024Wh | 1,024Wh |
| 定格出力 | 1,500W(瞬間最大3,000W) | 1,550W | 1,500W(X-Boost 1,900W) |
| 重量 | 約10.8kg | 約11.3kg | 約12.5kg |
| 電池 | リン酸鉄リチウムイオン | リン酸鉄リチウムイオン | リン酸鉄リチウムイオン |
| サイクル | 約4,000回 | 約4,000回後も初期容量の80%以上 | 4,000回後も初期容量の80%以上 |
| AC充電 | 最短約60分 | 約1時間弱(モードにより異なる) | 約56分 |
| 価格 | 通常価格 139,800円 | 定価 99,990円 | 希望小売価格 149,600円 |
※数値は記事末尾の参考資料に記載したメーカー発表・専門メディアの情報によります。
Jackery ポータブル電源 1000 New
- 容量:1,070Wh
- 定格出力:合計1,500W(瞬間最大3,000W)
- 出力ポート:AC×3、USB Type-C×2、USB Type-A×1、シガーソケット×1
- 重量:約10.8kg、サイズ:約32.7×22.4×24.7cm
3機種の中でいちばん軽く、容量もわずかに大きいモデルです。前モデルの1000 Proと比べて体積は約2割小さくなり、重さは800g軽くなったと報じられています。キャンプ場で車から運ぶことや、家の中で持ち運ぶことを考えると、軽さはそのまま使いやすさにつながります。ACコンセントが3口あり、照明・スマホ・電気毛布などを同時に使いやすい構成です。
Anker Solix C1000 Gen 2 Portable Power Station
- 容量:1,024Wh
- 定格出力:1,550W
- 重量:約11.3kg、サイズ:約38.4×20.8×24.4cm
- 発売:2025年6月から順次
定格出力が3機種の中で最も高い1,550Wです。定価は3機種の中で最も安い99,990円で、セール時にはさらに値下がりすることもあると報じられています。急速充電モードを使えば、1時間ほどでフル充電できるとされています。リン酸鉄リチウムイオン電池で、約4,000回の充放電後も初期容量の80%以上を保つとうたい、約10年の使用を想定しています。
EcoFlow DELTA 3 Plus
- 容量:1,024Wh
- 定格出力:1,500W(X-Boost使用時1,900W)
- ソーラー入力:最大1,000W
- 重量:約12.5kg
- 発売:2024年9月
AC入力で約56分という充電の速さと、最大1,000Wのソーラー入力に対応している点が特徴です。停電が長引いたときにソーラーパネルで充電することを考えるなら、ソーラー入力の大きさは心強いポイントです。出力600W未満の動作時は30dBと静かだとされており、夜のテント周りや寝室でも使いやすい設計です。3機種の中では最も重いので、持ち運ぶ頻度が高い人は重さも考えて選びましょう。
普段のキャンプでの使い方と備え方
ポータブル電源は「防災用にしまっておく」より、キャンプなどで普段から使うほうがおすすめです。使い方に慣れておけば、停電したときにも慌てずに済みます。また、残量や動作を定期的に確認することにもなります。
NITE のリチウムイオン電池搭載製品のチェックリストをもとに、ポータブル電源で気をつけたい点をまとめます。
- 保管場所:暑い日の車内や、直射日光の当たる窓際に放置しない。キャンプの行き帰りに車に積みっぱなしにしないようにしましょう。
- 保管時の充電量:なるべく満充電の状態を避け、どのくらいの頻度で充電が必要かを取扱説明書で確認する(過放電による劣化を防ぐため)。防災用は「満充電で放置」ではなく、説明書どおりに定期的に充電し直すことが大切です。
- 充電するとき:指定された充電器を使い、目の届く安全な場所で充電する。
- 異常のサイン:充電できない、急に電源が切れる、以前より異常に熱くなる、膨らんでいる、焦げたにおいがする、落として変形した。こうした異常があれば使用を中止し、販売店やメーカーに相談します。
- リコール情報:NITE の「SAFE-Lite」で、持っている製品にリコールが出ていないか定期的に確認しましょう。
- ソーラーパネル:停電が長引くことを考えるなら、対応するソーラーパネルを用意し、キャンプで一度試しておくと安心です。
防災での活用ポイント
- 停電時は、照明・スマートフォンの充電・ラジオなど、情報と明かりの確保を優先して使いましょう。容量を長持ちさせられます。
- 携帯発電機と違い、排ガスは出ません。ただし、テント内や車内で燃焼式の暖房器具や調理器具を使うのは一酸化炭素中毒の危険があります。ポータブル電源があっても、燃焼器具はメーカーの注意事項に従って使い、屋内では使わないでください。
- 停電から復旧するときは、通電火災に注意が必要です。NITE や自治体の消防局は、停電中は家電製品のコンセントを抜いておくことなどを呼びかけています。
まとめ
ポータブル電源を選ぶときは、容量(Wh)・定格出力(W)・電池の種類・充電方法の4点を確認しましょう。今回比較した3機種は、どれも1kWhクラスでリン酸鉄リチウムイオン電池を採用しており、キャンプにも防災にも使いやすい性能です。
- 軽さと容量のバランスを重視するなら Jackery 1000 New
- 価格と定格出力の高さを重視するなら Anker Solix C1000 Gen 2
- 充電の速さとソーラー充電を重視するなら EcoFlow DELTA 3 Plus
どのモデルを選んでも、普段から使い、高温を避けて保管し、定期的に充電しておくことが、いざというときに頼れる備えになります。
参考資料
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「停電時の発電機による CO 中毒や、復旧後の通電火災に注意!」(2023年8月29日、経済産業省・消費者庁と同時発表) https://www.nite.go.jp/data/000153249.pdf
- NITE「PSマガジン VOL.506」リチウムイオン電池搭載製品の事故と3つのC・チェックリスト(2026年8月7日) https://www.nite.go.jp/data/000162018.pdf
- NITE 製品安全センター「携帯発電機による一酸化炭素中毒」 https://www.nite.go.jp/data/000119246.pdf
- 東京都生活文化局「発電機の屋内使用は大変危険です!」(2020年9月15日) https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/attention/2020/documents/generator.pdf
- NITE SAFE-Lite(リコール情報) https://safe-lite.nite.go.jp/
- 柏市消防局「停電時の消防局からのお願い」 https://www.city.kashiwa.lg.jp/kikakusomu/fdk/anshinjoho/konnatokiha/216.html
- トラベル Watch「Jackery ポータブル電源 1000 New」(2024年10月7日) https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/pickup/1629365.html
- BE-PAL「Jackery ポータブル電源 1000 New」 https://www.bepal.net/archives/669767
- BE-PAL「Anker Solix C1000 Gen 2 Portable Power Station」 https://www.bepal.net/archives/669778
- INTERNET Watch「Anker Solix C1000 Gen 2」 https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/2016698.html
- BE-PAL「EcoFlow DELTA 3 Plus」 https://www.bepal.net/archives/669781
- ASCII.jp「EcoFlow DELTA 3 Plus / RIVER 3 発表」 https://ascii.jp/elem/000/004/218/4218235/